History of Education Thought Society  教育思想史学会





第13回大会―(2003年)




日程:
会場:

2003年9月27日(土)-28日(日)
目白大学(東京都新宿区中落合4-31-1)

西武新宿線、都営地下鉄大江戸線・中井駅下車徒歩8分

会場アクセス→ http://www.mejiro.ac.jp/japanese/campus/camp_frame.htm

キャンパス案内→ http://www.mejiro.ac.jp/japanese/campus/camp_s.html


〈 第 1 日 〉
10:00−12:00 理事会・編集委員会(新旧合同)
12:00- 受付【研心館】


13:30-17:30 【研心館】
シンポジウム「他者としての近代 ―西洋近代教育と「日本」―」
提案: 北村三子(駒澤大学)
辻本雅史(京都大学)
橋本美保(東京学芸大学)
司会: 矢野智司(京都大学)
概要:  これまで本学会では、西洋における近代以前の「教育」思想との対比から近代教育思想が問い直されたことはあったが、「日本」での近代以前と近代との対比はなされてこなかった。今回のシンポジウムでは、近世「教育」の視点とそして西洋近代教育との遭遇・受容・変容した明治期の視点から複眼的に捉えることによって、「日本」の教育経験とは何かを明らかにし、そこからあらためて近代教育思想を考えてみたい。このシンポジウムは、他者としての近代に出会う「日本」の教育経験から近代教育思想を捉え直す作業ということで、前回のシンポジウムである「コロニアリズムとしての教育学」と結びついている。内在的な展開としてではなく外部からの輸入として近代教育(思想)を経験した非西洋の私たちにとって、西洋における近代教育思想の捉え直しとは異なった反省を促すことになるだろう。


17:45−18:30 総会
18:30−20:00 懇親会


〈 第 2 日 〉
9:30−     受付
10:00−11:45 コロキウム


コロキウム1:「発達・超越・日常性」
発表: Paul Standish (University of Dundee)
齋藤直子(東京大学)
概要:  イギリスにおいては、伝統的功利主義に基づく教育、進歩主義教育、リベラルエデュケーション、効率的行為遂行を重視するパフォーマティビティの教育の4つが支配的な教育実践であった。こうした教育の思想を特徴づける直線発達的モデルは、人間経験を十全にとらえるものではなく、よって教育の可能性を制限するものである。本発表では、我々の日常性への関係を再考することを通じて超越への可能性を開示する、スタンリー・カベルの思想の教育的意義を論ずる。


コロキウム2:「文字と教育の思想史」
企画: 柴山英樹(日本大学大学院)
司会: 森田伸子(日本女子大学)
発表: 北詰裕子(日本女子大学非常勤)
柴山英樹(日本大学大学院)
柏木敦(神戸商科大学)
渡辺哲男(日本女子大学大学院)
概要:  リテラシーの教育思想をテーマに議論を試みるのだが、本コロキウムでは、とりわけ「文字」に着目しつつ、「文字」に関する解釈、新しい「文字」の試作、アルファベット文字を用いる西洋とひらがな・漢字・カタカナなどの多様な文字を用いる日本との両方の視点から、4名の提案者がそれぞれ論じ、「文字と教育の思想史」という新たな試みを提案したい。


コロキウム3:「対話的教育関係の構想 ―クリティカル・ペダゴジーの場」
企画: 小林大祐(慶應義塾大学)
司会: 上地完治(兵庫教育大学)
発表: 松岡靖(名古屋大学)
小林大祐(慶應義塾大学)
概要:  クリティカル・ペダゴジーは、ある種の規範主張として〈批判〉を遂行しようとするが、この立場から為される〈対話〉概念の基礎づけの探求は、〈対話〉に不可能性や無限の運動性を認める諸説との行き違いを、どうしても免れえないのだろうか。昨年のコロキウム『ジルーの批判的教育学』で交わされた議論を継承しつつ、「対話的教育関係」について検討する諸説の間にかみあった論争をつくっていくための土壌づくりをしたい。


コロキウム4:「日本の近代教育における『近代』と『西洋』のあいだ」
企画: 江口潔(中央大学非常勤)
司会: 日暮トモ子(早稲田大学大学院)
発表: 江口潔(中央大学非常勤)
前田晶子(鹿児島大学)
高瀬雅弘(日本学術振興会特別研究員)
概要:  本コロキウムでは日本の近代教育を捉える枠組みについて考えていきたい。日本の近代教育の西洋近代教育に対する独自性をめぐってはこれまでにも議論されてきたところであるが、ここではその構造を解明するためのいくつかの手がかり――能力(江口)、発達(前田)、青年期(高瀬)――をもとに、今日の教育を規定している思想の構造あるいは社会統合のシステムの成立過程を検討していくことで、上記の課題にせまることとしたい。


コロキウム5:「ミメーシス・美・身体 ―人間形成論への新たな接近―」
企画: 今井康雄(東京大学)
報告: クリストフ・ヴルフ (ベルリン自由大学/東京大学客員)
鈴木晶子 (京都大学)
樋口聡(広島大学)
概要:  ベルリン自由大学のクリストフ・ヴルフ氏は、近年、「遂行性」や「儀式」をキー概念にして社会形成・人間形成を解明しようとする理論構想を精力的に展開している。これは、反省的で自律的な強い自我の形成を目標にしてきた伝統的な「人間形成」(Bildung)の構想に対する相当根底的な批判を含んでいると考えられる。ヴルフ氏が彼のこうした人間形成論の核に据えているのがミメーシスの概念である。他方、日本的な文脈では、ミメーシスを核とした人間形成がむしろ人間形成論の本流を形作ってきたと言える。
 本コロキウムは、ヴルフ氏をゲストとして招き、彼の構想に、美(鈴木)、および身体(樋口)という視点から日本側の構想をぶつけて議論することによって、人間形成論への新たな接近への可能性を探ろうとするものである。


13:15−15:00


フォーラム1:「テキスト・身体・人間 ―カントを読むということ、書くということをめぐって―」
報告: 弘田陽介(日本学術振興会特別研究員)
司会: 山名淳(東京学芸大学)
概要:  イマヌエル・カントというテキストに触れること/このことは単に彼が残し現在まで刊行されてきた著作や研究書にあたることを指すのではない/彼が生きた時代およびそれ以降の200年間のテキストへの接触の技法こそが、カントをカントにしてきたテキストなのではないか/彼のテキストを読み、それと接続するテキスト・身体/同時にそこから離れていこうとするテキスト・身体/その中にカントそして近代の人間はいる/この場においては、カントを読み、触れる私の身体それ自体を読み、触れることによって、カントを読み・書くという営みが形作ってきた、私(たち)という人間そのものを問いに付すことを試みてみたい。


15:15−17:00


フォーラム2「Learningの思想史序説 ―Liberal artsはどのように学ばれたのか―」
報告: 松浦良充(慶應義塾大学)
司会: 松下良平(金沢大学)
概要:  「教育」の波は、いまや大学に押し寄せている。とりわけ大学における「教養」形成と教育とは緊密な関係を結んでいる。教養教育という用語が跋扈し、liberal artsの重要性が声高に叫ばれている。しかし大学という知的営為も、さらにliberal arts(artes liberales)の習得も、いずれも近代的「教育」概念の成立以前から連綿と続いてきたものではなかったか。本報告では、本学会第11回大会シンポジウム「教育的関係の概念装置―<教え−学ぶ>関係を問い直す」における提案を引き継ぎ、home educandus(イリイチ)の歴史としての教育思想史のオルタナティヴとして、「Learningの思想史」の構想を試みる。その第一歩として、そもそもliberal artsはどのようにして習得されたのか、について考えてみよう。読むこと、書くこと、記憶すること、そして瞑想することの絡み合いのなかにLearningの原型を探し求めたい。



※発表者などの所属は2003年12月現在のものです。