〈New!〉ガイドブック『現代を解きほぐす教育思想――問い、希望するために』をアップいたしました

2017年10月から11月にかけて『教育思想事典 増補改訂版』の刊行記念フェア 「現代を解きほぐす教育思想――問い、希望するために」(紀伊國屋書店新宿本店3階人文書フロア、後援:教育思想史学会、後援/協力:勁草書房)が開催されました折に、リーフレットとして『現代を解きほぐす教育思想――問い、希望するために』(教育思想史学会特別企画チーム編)が作成されました。
教育思想に関する重要な書籍およそ220点が14のトピックに分けて解説されたブックガイドです。こちらからご覧いただくことができますので、ぜひご活用ください。

*本ガイドブックに記載されている学会および学会長などの情報および書誌情報は、2017年作成当時のものです。書籍は、すでに品切・絶版の場合もございますので、あらかじめご了承ください。

フェアの写真

「ブックガイド」のまえがき

松下良平(教育思想史学会会長(刊行当時))

教育思想にかかわる必読書のリストとその解説をお贈りします。教育思想史学会に所属する中堅・若手からの選りすぐりのメンバーが、その任に当たってくれました。

ブックガイド

今日、学校教育をはじめとして教育に熱い期待が寄せられています。かつては学生による自主的な学びに任せていた大学も、今やすっかり様変わりして教育熱心になりました。しっかり計画された教育があちこちで繰り広げられることによって、若い世代の将来は安泰だ。こう言いたいところですが、ことはそう単純ではありません。教育の内実こそがそこでは問われるからです。

経済の停滞やグローバル化や少子高齢化や人工知能の進歩などの影響により、社会はドラスティックに変わりつつあります。その先行きがあまりにも不透明で不確実なために、これまでの教育を手直しするだけでは、激動する社会を「生きる力」にはつながらないのでは?――このような問いが切実なものになっています。既定の道をひたすら前へ進むための教育。その教育のあり方を根本から問い直さなければならない局面に差しかかっているということです。

ところが現実には、そのような問いを封じる風潮が広がっています。近未来の社会で役立ちそうな知識や能力・スキルを身につけさせれば教育は十分である、とする考え方が社会を席捲しつつあるのです。そのため教育する側も、政治や顧客が求める教育成果を目に見える形で出すことに躍起になり、そのことが何を意味するのかを考えない傾向が強まっています。人びとは教育について熱く語ることもなく、教育を単なるテクノロジーの問題とみなし、どのような手段を用いればどのような成果が得られるか、ばかりを考えます。さまざまな方法をまずは試して、その成果をデータでチェックし、よいデータが得られたら怪しげな方法でも受け入れ、課題が残れば新しい教育政策を次々と政治主導で導入していく。――こうしたプロセスが、教育現場の悲鳴や多様な声を無視して淡々とくりかえされています。そこでは多くの人びとは、データに一喜一憂するだけであり、そこで身につけた学力や規律がどのような知性や社会性につながるのか、改めて問おうとはしません。

しかし教育思想は違います。教育をテクノロジーの問題に還元できるとみなす教育観がどこから来たのか、人間や社会に何をもたらすのかについて探究します。教育についての狭く硬直した見方を打破するべく、現代人に自明のものとなっている西洋近代由来の「教育」を相対化し、それとは別の教育の可能性を開示し、学校教育の特異性を暴きだし、教え学ぶことと生や死との深い結びつきに迫るのです。

このブックレットを読まれた方々が、当たり前の世界の外側へと誘われていくことを願っています。めくるめく多様で奥が深いけれども、もっと見通しがよく、伸びやかになれる場所へ。