教育思想史学会奨励賞

教育思想史学会奨励賞は、今後、教育思想史研究を担っていくことが期待される、比較的研究歴の浅い、将来性と可能性に富んだ研究者に贈られるものであり、『教育思想事典』(今後は『増補改訂版』の分も含む)の印税寄付による特別会計予算を有効に活用し会員の研究活動に有益な還元を行う一環として、2003/04年度に創設されました。

New!教育思想史学会奨励賞(第16回)募集のお知らせ

教育思想史学会では、このたび、下記の通り「教育思想史学会奨励賞」(第16回)の募集を行います。

候補者のノミネートは、会員からの自薦および他薦により行われます。
学会および学会員の方々にとって新たな研究活動に向けた活力の源になることを願って創設されたこの奨励賞に、今回も多くの応募があることを期待しております。

応募にあたっては、下記の条件とともに、ホームページ下方に掲載されている奨励賞規約をご一読ください。

第16回教育思想史学会奨励賞の応募対象

教育思想史学会の会員によって雑誌論文、分担執筆論文等の形で、2015年12月1日以降に公刊された単一の単著論文。

応募に必要なもの

以下の内容を下記の送付先までご送付ください。
なお、送付物は原則として返却いたしません。論文等はコピー等をお送り下さい。

  • (自薦の場合)①応募者の氏名、所属、連絡先。②原著論文あるいはそのコピー1部。
  • (他薦の場合)①推薦者の氏名、所属、連絡先。②推薦する論文の著者名、タイトル、掲載された雑誌名と巻号数、ないし書名と出版年。③推薦理由。
    → ①~③をA4用紙1枚以内に記入してください。

送付先

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-2
大阪大学大学院・人間科学研究科 岡部美香気付
教育思想史学会事務局 教育思想史学会奨励賞(応募)係

応募受付期間

2018年9月1日(土)より11月30日(金)まで(必着)

第15回教育思想史学会奨励賞の審査結果

第15回教育思想史学会奨励賞の募集は、2017年11月30日に締め切られ、奨励賞特別選考委員会および理事会において厳正に審査した結果、受賞者が決定しました。
以下に、教育思想史学会奨励賞特別選考委員会からの報告を掲載いたします。

【受賞者】伊藤 敦広(作新学院大学女子短期大学部)

【受賞論文】「他なるもの」の理想化としての陶冶――フンボルト陶冶論における古代ギリシャの意義(『教育哲学研究』第111号、2015年5月)

【授賞理由】

フンボルトの陶冶論は古典的陶冶論の代表ともいえるが、テクストとして明示できる形で存在しているわけではない。多様な領域に及ぶテクスト群から陶冶論として読み解き、再構成する必要がある。そのためドイツでもシュプランガーとメンツェの試み以来大きな進展はないし、今日ではもっぱらその陶冶論の現代的意義の解明に研究の重点が移っている。そのような状況下で、フンボルトのいくつかのテクストから、「古代ギリシャ」に焦点を当ててフンボルト陶冶論の新たな次元を開示しようと試みたのが、本論文である。

議論は次のように展開される。まず、古代語学習を諸能力の訓練とみなす当時の形式陶冶論に対して、フンボルトは「学習の学習」という形式陶冶の側面だけでなく、ギリシャ語学習がもつ「ギリシャ精神」の継承という実質陶冶の側面にも目を向けていることが確認される。さらに、フンボルトにおいては「他なるもの」に自己を類似させる「類似化」が陶冶を可能にするとされるが、その「他なるもの」として選ばれた古代ギリシャ人とは、自らの疎外状態を克服しようとする近代人の理想が投影された「シンボル」(自己の世界をシンボルに創り変えることで自己陶冶する人間のシンボル)であることが指摘される。そのとき古代ギリシャという理想は、ドイツ国民の形成という政治的課題と結びついていた。そこにおける古代理解が「不可避的な錯覚」であることを自覚しつつも、その理想は自分たちの文化や教養といった精神的所産の評価基準として機能することを、フンボルトは期待していたのである。こうしてフンボルトの陶冶論においては、多様な個人の自己陶冶という課題とドイツ国民の統一的な文化を創出する基準の形成という課題とが、緊張をはらみつつ共存していたことが明らかにされる。

このように本論文は、未だ研究が十分とはいえないフンボルト陶冶論の再構成に果敢に挑戦し、フンボルトの学問研究上の手法の違い、つまり諸テクストの背後にある研究関心の錯綜(実証的データの追求とフィクショナルな理想の追求)にも目配りしながら、その新たな次元を解明しようとして、一定の成功を収めている。歴史研究と(国民)教育の関係についての教育思想史的研究という観点から見ても重要な成果だといえる。選考委員会では先行研究として言及されているメンツェらの成果との異同が十分に明確ではないことが問題になったが、手堅く緻密な議論によりフンボルト陶冶論の奥行きと広がりが明らかにされ、いくつかの興味深く新奇性に富んだ論点が提示されたことは高く評価された。

以上の理由により、本賞選考委員会は、伊藤敦広氏の上記論文に第15回教育思想史学会奨励賞を授与することを決定した。

選考委員会委員長 松下良平

教育思想史学会奨励賞・過去の受賞

受賞者(所属) 受賞論文
第14回 該当なし 該当なし
第13回 山田 真由美(慶應義塾大学・院生) 高坂正顕の教育思想における『主体』概念
第12回 村松 灯(東京大学・院生) 非政治的思考の政治教育論的含意―H. アレントの後期思考論に着目して―
第11回 河野桃子(信州大学) 前後期シュタイナーを貫く「世界自己」としての「私」という観点―シュタイナーのシュティルナー解釈に見られる倫理観に着目して―
第10回 生澤繁樹(上越教育大学) 民主的な子どもの性向を育てる―デューイにおける家庭・学校・共同体のアポリア―
第9回 関根宏朗(岩手県立大学) エーリッヒ・フロム『自己実現』論の再構成―『持つこと』と『在ること』の連関に注目して―
第8回 鈴木篤(兵庫教育大学) 1920年代ドイツ「教育の限界論争」の再検討―S.ベルンフェルトの議論を中心に―
第7回 青柳宏幸(中央大学・非常勤) マルクスにおける労働と教育の結合の構想―国際労働者協会ジュネーブ大会における教育論争を手がかりとして―
第6回 小野文生(京都大学) 分有の思考へ―ブーバーの神秘主義的言語を対話哲学へ折り返す試み―
第5回 古屋恵太(東京学芸大学) 「自然な学び」の論理から「道具主義」は離脱できるか?―現代社会的構成主義への進歩主義教育の遺産―
第4回 森岡次郎(大阪大学) 「新優生学」と教育の類縁性と背反―「他者への欲望」という視座―
第3回 下司晶(上越教育大学) 〈現実〉から〈幻想〉へ/精神分析からPTSDへ―S.フロイト〈誘惑理論の放棄〉読解史の批判的検討―
第2回 岩下誠(東京大学大学院) ジョン・ロックにおける教育可能性に関する一考察―観念連合を中心に―
第1回 北詰裕子 J.A.コメニウスにおける事物主義と図絵 ― 17世紀普遍言語構想における言葉と事物 ―

過去の授賞理由はこちらをご覧ください。

教育思想史学会奨励賞規約

1.教育思想史研究の発展に寄与する研究業績を顕彰するために「教育思想史学会奨励賞」(以下単に「賞」と呼ぶ)を創設する。

2.賞の対象は、教育思想史学会の会員によって雑誌論文、分担執筆論文等の形で過去3年以内に公刊された単一の単著論文とする。

3.選考委員会は全理事によって構成し、会長が選考委員会の長を兼ねる。

4.選考委員会は賞の対象となる論文を会員から募集する。応募する会員は選考の対象となる自著論文を選考委員会に送付する。

5.会員は選考の対象となる論文を推薦することができる。推薦を希望する会員は、推薦する論文を選考委員会に送付する。

6.選考の対象となる論文は、(1) 会員が応募した論文、および(2) 会員が推薦した論文とする。

7.選考委員会は賞を授与すべき論文を選考し、その著者に賞状ならびに副賞5万円を授与する。