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教育思想史学会奨励賞
教育思想史学会奨励賞は、今後、教育思想史研究を担っていくことが期待される、比較的研究歴の浅い、将来性と可能性に富んだ研究者に贈られるものであり、『教育思想事典』(今後は『増補改訂版』の分も含む)の印税寄付による特別会計予算を有効に活用し会員の研究活動に有益な還元を行う一環として、2003/04年度に創設されました。
第22回教育思想史学会奨励賞募集のお知らせ〈締め切りました〉
教育思想史学会では、下記の通り「教育思想史学会奨励賞」(第22回)の募集を行います。
候補者のノミネートは、会員からの自薦および他薦により行われます。学会および学会員の方々にとって新たな研究活動に向けた活力の源になることを願って創設されたこの奨励賞に、今回も多くの応募があることを期待しております。
Webサイト上からの応募となりますので、ご注意ください。
教育思想史学会奨励賞(第22回)応募フォームはこちら
応募にあたっては、下記の条件とともに、本ページ下部にある奨励賞規約をご一読ください。
第22回教育思想史学会奨励賞の応募対象
教育思想史学会の会員によって雑誌論文、分担執筆論文等の形で、2021年12月1日以降に公刊された単一の単著論文。
応募に必要なもの
所定のフォームにて以下の内容のご記入をお願いいたします。
①自薦・他薦の別、②記入者氏名、③記入者の所属、④記入者のメールアドレス、⑤応募論文の書誌情報(著者名、タイトル、掲載雑誌名、巻号数、所収頁数)(書籍の場合は、著者名、タイトル、出版年)、⑥(他薦の場合)推薦理由(400字以内)。
応募受付期間
2024年9月1日(日)0時より11月30日(土)24時まで
以上
第22回教育思想史学会奨励賞の選考結果
第22回教育思想史学会奨励賞の募集は、2024年11月30日に締め切られ、奨励賞特別選考委員会および理事会(選考委員会)において厳正に審査した結果、1名の受賞者が決定しました。
奨励賞授賞式は第35回大会で行われる予定です。以下に、教育思想史学会奨励賞特別選考委員会からの報告を授賞式に先立って掲載いたします。
【受賞者・対象論文】
浅井健介(奈良教育大学)
【受賞論文】
「世界疎外の時代における教育の公共性―アーレントから問う近代教育のアポリア―」(『教育学研究』第91巻第2号、2024年、170-182頁)
【授賞理由】
奨励賞の選考においてはつねに、教育思想史研究として十分な説得力をそなえているかどうかという観点からの評価と、これまでの教育思想史学会の議論ないしは国内外の教育思想史研究に新たな展望を切り 拓く挑戦的な姿勢と勢いがあるかどうかという観点からの評価とがせめぎあう。今回は、特に後者の観点において高く評価された本論文が選ばれた。
本論文は、近代教育批判・戦後教育批判に共通した自己疎外批判の傍らで世界疎外という問題が等閑視されてきたという批判的認識のもと、公共性の現実的基盤の喪失を世界疎外として捉え、この困難(アポリア)と向きあう方途をハンナ・アーレントの思想の解釈を通して探ろうとしている。 アーレントによるマルクスの批判的解釈をめぐる哲学的な検討と、戦後教育批判から公共性をめぐる今日の教育学の議論までを広く視野に収めた検討とを接合するという挑戦的な試みを成功させた好論文だと評価できる。 一人の思想家の思想研究として解釈の独自性を追究し、一定の解釈水準を保持しながらも、教育(思想)研究としての議論も成立させており、単なる思想解釈・時代解釈の範疇をこえた観点と問題意識を示し得た点が特に優れているといえる。 本論文の末尾で論者自身が掲げている課題がよりいっそう深く検討されることによって、解釈の異論も巻き込みながら世代や研究領域の境界を越えた学術的対話が本学会にもたらされることが期待される。
他方で、ポスト・トゥルース状況にある今日において、いかにして世界疎外をこえ「世界との経験」を取り戻し、教育学的公共性の現実的基盤となる「対話の基盤となる共通世界」を提示することができるのかについては、問いの喚起に留まっており、もう少し踏み込んだ論述展開がほしかった。 また、思想研究としての精度に不十分さがみられる点や議論展開がやや強引で粗削りであるように思われる点も無視できない課題である。若手研究者である論者の今後の成⻑・成熟に期待したい。とはいえ、本論文が奨励賞にふさわしい刺激的で、何より挑戦的かつアンビシャスな論文であることは疑いない。よって奨励賞特別選考委員会および理事会(選考委員会)は、本論文に第22回教育思想史学会奨励賞を授与するものである。
選考委員会委員⻑ 山名 淳
教育思想史学会奨励賞・過去の受賞
回 | 受賞者(所属) | 受賞論文 |
第21回 |
安道健太郎(長崎総合科学大学) 中西亮太(東京大学大学院) |
アドルノのプロパガンダ研究における社会的啓蒙の構想――民主的リーダーシップ概念に注目して ロールズの正義感覚の思想史的研究――ピアジェからの影響に焦点を当てて |
第20回 |
森 祐亮(株式会社OpenDNA/慶應義塾大学) |
G. ブックのヘルバルト解釈とその思想史的背景——ドイツ戦後保守知識人たちの教育論との親和性—— |
第19回 |
川上 英明(山梨学院短期大学) 森田 一尚(大阪樟蔭女子大学) |
田邊元と森昭の経験主義批判における認識論の問題:京都学派教育学における「行為的自覚」の系譜 E. フロム精神分析理論における宗教論の教育的含意 |
第18回 |
吉野 敦(早稲田大学大学院) |
フランスにおける最初期ペスタロッチ受容の思想的基盤ーーマルク=アントワーヌ・ジュリアン以前の動向に着目してーー |
第17回 |
堤 優貴(日本大学) |
後期フーコーの倫理的主体形成論における『教育的関係』ーー1980年代のプラトン読解を中心にーー |
第16回 |
桑嶋 晋平(東京大学大学院) |
戦前・戦中期の勝田守一における他者あるいは他者とともにあることをめぐる問題 |
第15回 |
伊藤 敦広(作新学院大学女子短期大学部) |
「他なるもの」の理想化としての陶冶――フンボルト陶冶論における古代ギリシャの意義 |
第14回 |
該当なし |
該当なし |
第13回 |
山田 真由美(慶應義塾大学・院生) |
高坂正顕の教育思想における『主体』概念 |
第12回 |
村松 灯(東京大学・院生) |
非政治的思考の政治教育論的含意―H. アレントの後期思考論に着目して― |
第11回 |
河野桃子(信州大学) |
前後期シュタイナーを貫く「世界自己」としての「私」という観点―シュタイナーのシュティルナー解釈に見られる倫理観に着目して― |
第10回 |
生澤繁樹(上越教育大学) |
民主的な子どもの性向を育てる―デューイにおける家庭・学校・共同体のアポリア― |
第9回 |
関根宏朗(岩手県立大学) |
エーリッヒ・フロム『自己実現』論の再構成―『持つこと』と『在ること』の連関に注目して― |
第8回 |
鈴木篤(兵庫教育大学) |
1920年代ドイツ「教育の限界論争」の再検討―S.ベルンフェルトの議論を中心に― |
第7回 |
青柳宏幸(中央大学・非常勤) |
マルクスにおける労働と教育の結合の構想―国際労働者協会ジュネーブ大会における教育論争を手がかりとして― |
第6回 |
小野文生(京都大学) |
分有の思考へ―ブーバーの神秘主義的言語を対話哲学へ折り返す試み― |
第5回 |
古屋恵太(東京学芸大学) |
「自然な学び」の論理から「道具主義」は離脱できるか?―現代社会的構成主義への進歩主義教育の遺産― |
第4回 |
森岡次郎(大阪大学) |
「新優生学」と教育の類縁性と背反―「他者への欲望」という視座― |
第3回 |
下司晶(上越教育大学) |
〈現実〉から〈幻想〉へ/精神分析からPTSDへ―S.フロイト〈誘惑理論の放棄〉読解史の批判的検討― |
第2回 |
岩下誠(東京大学大学院) |
ジョン・ロックにおける教育可能性に関する一考察―観念連合を中心に― |
第1回 | 北詰裕子 |
J.A.コメニウスにおける事物主義と図絵 ― 17世紀普遍言語構想における言葉と事物 ― |
過去の授賞理由
過去の授賞理由はこちらをご覧ください。
教育思想史学会奨励賞規約(2025年5月10日改訂)
1.教育思想史研究の発展に寄与する研究業績を顕彰するために「教育思想史学会奨励賞」(以下単に「賞」と呼ぶ)を創設する。
2.賞の対象は、教育思想史学会の会員によって雑誌論文、分担執筆論文等の形で過去3年以内に公刊された単一の単著論文とする。
3.選考委員会は全理事によって構成し、会長が選考委員会の長を兼ねる。
4.選考委員会は当該年度の『近代教育フォーラム』最新号に掲載された投稿論文を賞の選考対象とし、加えて賞の対象となる論文を会員から募集する。応募する会員は選考の対象となる自著論文を選考委員会に送付する。
5.会員は選考の対象となる論文を推薦することができる。推薦を希望する会員は、推薦する論文を選考委員会に送付する。
6.選考の対象となる論文は、(1)当該年度の『近代教育フォーラム』最新号に掲載された投稿論文、(2)会員が応募した論文、および(3)会員が推薦した論文とする。なお、(1)および(3)については、選考前に、当該論文の著者に対して選考の対象となることを伝え、著者は選考の対象となることを辞退できるものとする。
7.選考委員会は賞を授与すべき論文を選考し、その著者に賞状ならびに副賞5万円を授与する。