近代教育フォーラム別冊 | |
教育思想史コメンタール | |
『教育思想史コメンタール』編集委員会 編 | |
2010年10月20日刊行(B5判) |
【『教育思想史コメンタール』刊行の趣旨】 |
私たちの学会は、2010年に第20回大会を迎えました。現在、近代教育思想史研究会の創設(1991年)から数えて19年、教育思想史学会として新たな出発(1997年)を試みてからでも13年の歳月が経過しました。28名の発起人から出発した研究会は、いまや約300名の会員を擁する学会となり、規模としては大きく成長しました。 ただしこの歳月は、私たちに、あらためて学会の活動や教育思想史研究のあり方について、根源的な問い直しを迫っているように思えます。冷戦体制の崩壊とともに、日本の教育の状況や教育学の様相も大きく変貌しました。私たちの研究会の発足の根拠でもあった「近代教育(学)批判」や「教育学の再構築」という課題は、当時、教育のあり様や教育学の自明性への挑戦として、新鮮かつ刺激的な波紋を投げかけました。それが周囲の注目を浴びることになり、私たちの研究会を大規模な研究集団に成長させました。ところが約20年の歳月を経て、私たちの挑戦そのものが、すでに教育学における「自明」の前提になりつつあります。このことは、私たちの活動の一定の成果として世に誇ることができものです。しかし同時にそれは、これからの私たちの学会の使命や存在意義に関して、新たなる再確認や再考を迫るものになっています。 私たちの学会では、かつて『教育思想事典』(勁草書房)を刊行し、私たちの研究成果を世に問いました。幸い同書への反響は大きく、版を重ねることができました。また執筆者の大部分の貴重なご好意を得て、その印税を、学会に寄付していただきました。学会では、これを特別事業予算として計上し、一つは教育思想学会研究奨励賞の資金として、もう一つは特別出版事業に活用することになりました。そして後者の企画として、今回、『教育思想史コメンタール』が刊行されることになりました。 『教育思想史コメンタール』では、私たちの学会の軌跡を検証し、その意味を解明し、現状を反省し、今後の課題を展望することをめざします。それは、教育思想史学会の思想史を描く試みです。そして、それを可能な限り、周年事業にありがちな内輪の回顧と展望としてではなく、日本の教育思想史研究の現在の水準と課題をも確認するものにしたい、と考えています。さらに、ひいては日本の教育学研究のあり方にも一石を投じるものにできれば、と願っています。 |
【内容】 |
* 学会の創設20周年を記念して、『近代教育フォーラム』の別冊として刊行されます。 |
* 『近代教育フォーラム』(創刊号〜第18号)の議論を、5つの時期(部)に分けてレヴューしました。各部のレヴューの内容は、論者によって、当該時期の議論について、その全体的な傾向を考察するもの、もしくは個別のテーマに焦点化して再論するものとなっています。各時期区分と担当編集委員は次の通りです。 |
第T部(創刊号〜第3号:1992-1994): 田中智志 第U部(第4〜6号:1995-97): 山名 淳 第V部(第7〜10号:1998-2001): 鈴木晶子 第W部(第11〜14号:2002-05):綾井桜子 第X部(第15〜18号:2006-09): 下司 晶 |
【『教育思想史コメンタール』の販売について】 |
『教育思想史コメンタール』は教育思想史学会事務局で販売しております。 |
ご購入を希望される場合は、
|
販売価格は会員の方が1,200円、非会員の方が2,200円です。また、2015年9月より送料360円を別途、頂戴しております。ご了承ください。 |
【『教育思想史コメンタール』編集委員会】 * 松浦良充(委員長)・綾井桜子・下司晶・鈴木晶子・田中智志・山名淳 |
|目次
序 ―刊行の趣旨― | |
第?部 思想運動の草創:近代教育[学・思想]批判と教育目的論 | |
創刊号を読む ―近代教育学批判という思想運動のアルケー― | 丸山 恭司 |
教育目的論の近代と批判の未来 | 小野 文生 |
教育目的の倫理 ―教育思想史の考え方― | 田中 智志 |
第?部 拡張と格闘:歴史的視点と「古典」の読み直し | |
近代批判とディシプリンの制度化 ―教育思想史の研究会から学会への転換期に何が語られたのか― |
山名 淳 |
守るに値する思い出? ―教育思想研究と歴史的視点― | 相馬 伸一 |
重なり合う「古典」 ―1990年代後半における「古典」の読み直しとフーコー― | 北詰 裕子 |
第?部 近代へのこだわり:教育思想史の方法と多様化する方略 | |
現代と近代のあいだ ―教育思想史の場を求めて― | 鈴木 晶子 |
「美と教育」は如何にして論じられたか | 西村 拓生 |
「学級」再考 | 今井 重孝 |
第?部 「教育」の彼方へ?:思想史のなかの「学ぶ」「教える」 | |
知る・学ぶ・教養をめぐる問題圏 ―教育思想研究における歴史的アプローチを再考する― |
綾井 桜子 |
新教育の彼方へ ―学ぶこと・教えることの新たなヴィジョンに向けて― | 松下 良平 |
教育思想史におけるポストコロニアルの視点 | 小玉 重夫 |
第?部 省察から展望へ:近代批判と教育思想史のゆくえ | |
近代教育学を思想史研究として問うことは何を問うことだったのか ―カノン形成から見た教育思想史研究史覚書― |
矢野 智司 |
「近代批判」のゆくえ | 今井 康雄 |
近代批判から教育人間学へ? ―失われた<歴史>を求めて― | 下司 晶 |
資料編 | |
資料1:近代教育思想史研究会〜教育思想史学会/理事・編集委員等一覧 | |
資料2:『近代教育思想史研究会』(仮称)発起人会へのお誘い | |
資料3:「近代教育思想史研究会」へのお誘い(設立趣意書) | |
資料4:近代教育思想史研究会 会則(発足時) | |
資料5:「近代教育フォーラム」(創刊号から第18号)主要目次 | |
むすび | 松浦 良充 |